ている座敷のほうには女房だけがいた。男の子供たちだけは乳母《めのと》に添ってここにいた。
「今さら若々しい態度をとるあなたではありませんか。かわいい人たちをあちらこちらへ置きはなしにして、自身は寝殿でお姫様に帰った気でいられるあなたの気持ちは解釈に苦しむ。私への愛情がそんなふうに少ないとは私にもわかっているのですが、昔からあなたにばかり惹《ひ》かれる心を私は持っているし、今ではおおぜいのかわいそうな子供ができているのですから、二人の結合のゆるむことはないと信じていたのに、ちょっとしたことにこだわって、こんな扱いを私になさることはいいことだろうか」
取り次ぎによって夕霧はこう妻を責めた。
「もうすべてのことがお気に入らないものになってしまったのですから、お困りになる私の性質は今さら直す必要もないと思います。かわいそうな子供たちだけを愛してくださればうれしく思います」
と夫人は返事をさせた。
「おとなしい御|挨拶《あいさつ》だ。結局はだれの不名誉になることとお思いになるのだろう」
と言って、しいて夫人の出て来ることも求めずに、この晩は一人で寝ることにした。どちらつかずの境遇になったと
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