気がしてすべてを省くことにした。明け方にそれらの作が講ぜられて、人々は早朝に院から退出した。
六条院は中宮のお住居《すまい》のほうへおいでになってしばらくお話しになった。
「ただ今はこうして御閑散なのですから、始終お伺いして、何ということもありませんが年のいくのとさかさまにますます濃くなる昔の思い出についてお話もし、承りもしたいのを果たすことがなかなか困難です。出家をしたのでもなし、俗人でもないような身の上で、行動の窮屈な点があります。どちらにも私よりあとに志を起こして先へ進まれる求道者が多いのですから心細くて、思いきって田舎《いなか》の寺へはいることにしようかともいよいよ近ごろは思われるのですが、あとの家族たちに関心をお持ちくださるようには以前からもお頼みしていることですが、その時になりましたら憐《あわれ》みをお垂《た》れになってください」
などと六条院はまじめな御様子でお語りになった。今も若々しくおおような調子で、中宮は、
「宮中住まいをしておりましたころよりも、お目にかかります機会がだんだん少なくなってまいりますことも、予期せぬことでございましたから寂しゅうございましてね。皆
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