っしょに遊んでおいでになるのをかわいく思ってながめておいでになるのであった。かどのお座敷の前で三の宮をお下《お》ろししたのを、二の宮がお見つけになって、
「私も大将に抱いていただくのだ」
とお言いになると、三の宮が、
「いけない、私の大将だもの」
と言って伯父《おじ》君の上着を引っぱっておいでになる。院が御覧になって、
「お行儀のないことですよ。お上《かみ》のお付きの大将を御自分のものにしようとお争いになったりしてはなりませんよ。三の宮さんはよくわからずやをお言いになりますね。いつでもお兄様に反抗をなさいますね」
とお訓《さと》しになる。大将も笑って、
「二の宮様はずいぶんお兄様らしくて、お小さい方によくお譲りになったり、思いやりのあることをなさいます。大人でも恥ずかしくなるほどでございます」
こんなことを言っていた。院は微笑を顔にお浮かべになって、お小言《こごと》はお言いになったものの、どちらもかわいくてならぬというような表情をしておいでになった。
「公卿《こうけい》をこんな失礼な所へ置いてはおけない。対のほうへ行くことにしよう」
とお言いになって、立とうとあそばされるのであるが、宮たちがまつわってお離れにならない。宮の若君は宮たちと同じに扱うべきでないとお心の中では思召《おぼしめ》されるのであるが、女三の尼宮が心の鬼からその差別待遇をゆがめて解釈されることがあってはと、優しい御性質の院はお思いになって、若君をもおかわいがりになり、大事にもあそばすのであった。大将はこの若君をまだよく今までに顔を見なかったと思って、御簾《みす》の間から顔を出した時に、花の萎《しお》れた枝の落ちているのを手に取って、その児《こ》に見せながら招くと、若君は走って来た。薄藍《うすあい》色の直衣《のうし》だけを上に着ているこの小さい人の色が白くて光るような美しさは、皇子がたにもまさっていて、きわめて清らかな感じのする子であった。ある疑問に似たものを持つ思いなしか、眸《まな》ざしなどにはその人のよりも聡慧《そうけい》らしさが強く現われては見えるが、切れ長な目の目じりのあたりの艶《えん》な所などはよく柏木《かしわぎ》に似ていると思われた。美しい口もとの笑う時にことさらはなやかに見えることなどは自分の心に潜在するものがそう思わせるのかもしらぬが、院のお目には必ずお思い合わせになることが
前へ
次へ
全13ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング