なった若君を、院はどんなにお愛しになるだろうという想像をして、家司《けいし》たちは大がかりな仕度《したく》を御出産祝いにした。六条院の各夫人から産室への見舞い品、祝品はさまざまに意匠の凝らされたものであった。折敷《おしき》、衝重《ついがさね》、高杯《たかつき》などの作らせようにも皆それぞれの個性が見えた。五日の夜には中宮《ちゅうぐう》のお産養《うぶやしない》があった。母宮のお召し料をはじめとして、それぞれの階級の女房たちへ分配される物までも、お后《きさき》のあそばすことらしく派手《はで》にそろえておつかわしになったのである。産婦の宮への御|粥《かゆ》、五十組の弁当、参会した諸官吏への饗応《きょうおう》の酒肴《しゅこう》、六条院に奉仕する人々、院の庁の役人、その他にまでも差等のあるお料理を交付された。院の殿上人とともに中宮職の諸員は大夫《たゆう》をはじめ皆参っていた。七日の夜には宮中からのお産養があった。これも朝廷のお催しで重々しく行なわれたのである。太政大臣などはこの祝賀に喜んで奔走するはずの人であったが、子息の大病のためにほかのことを思う間もないふうで、ただ普通に祝品を贈って来ただけ
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