とって、あちらのことは迷惑千万に違いないが、それをあなたは許して、つまらない者の感情をまで思いやってくれる寛大な愛に比べて、私のはただお上が悪くお思いにならないかという点だけで苦労をしているのは、あさはかな愛の持ち主というべきですね」
微笑をしてお言い紛らわしになる。
「六条院へはあなたが快くなった時にいっしょに帰ればいいのですよ。宮の御訪問をするのもそれからあとのことです」
そうきめておいでになるように仰せられた。
「私は静かな独棲《ひとりず》みというものもしてみとうございますから、あちらへおいでになって、宮様のお心のお慰みになりますまでずっといらっしゃい」
夫人からこんな勧めを聞いておいでになるうちに日数がたった。
院のおいでにならぬ間の長いことで今までは院をお恨みにもなった宮でおありになるが、今はその一部を自身の罪がしからしめているのであるということをお知りになって、しまいに法皇のお耳へもはいったならどう思召《おぼしめ》すことであろうと、生きておいでになることすらも恐ろしくばかりお思われになるのであった。お逢《あ》いしたいとしきりに衛門督《えもんのかみ》は言ってくるが、小
前へ
次へ
全127ページ中100ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング