、その席へ院の御秘蔵の楽器が紺錦《こんにしき》の袋などから出されて配られた。明石夫人は琵琶《びわ》、紫の女王には和琴《わごん》、女御は箏《そう》の十三|絃《げん》である。宮はまだ名楽器などはお扱いにくいであろうと、平生弾いておいでになるので調子を院がお弾き試みになったのをお配らせになった。院は、
「箏《そう》の琴《こと》は絃がゆるむわけではないが、他の楽器と合わせる時に琴柱《ことじ》の場所が動きやすいものなのだから、初めからその心得でいなければならないが、女の力では十分締めることがむずかしいであろうから、やはりこれは大将に頼まなければなるまい。それに拍子を受け持っている少年たちもあまり小さくて信用のできない点もあるから」
とお笑いになりながら、
「大将にこちらへ」
とお呼び出しになるのを聞いて、夫人たちは恥ずかしく思っていた。明石夫人以外は皆院の御弟子なのであるから、院も大将が聞いて難のないようにとできばえを祈っておいでになった。女御は平生から陛下の前で他の人と合奏も仕|馴《な》れているからだいじょうぶ落ち着いた演奏はできるであろうが、和琴というものはむずかしい物でなく、きまったこ
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