とであるから、たいそうにはせず宮が訪《たず》ねておいでになることをお言いやりになった。院も、
「ごもっともなことですよ。こんな仰せがなくともこちらから進んでお伺いをなさらなければならないのに、ましてこうまでお待ちになっておられるのだから、実行しないではお気の毒ですよ」
 とお言いになり、機会をどんなふうにして作ろうかと考えておいでになった。何でもなくそっと伺候をするようなことはみすぼらしくてよろしくない。法皇をお喜ばせかたがた外見の整ったことがさせたいとお思いになるのである。来年法皇は五十におなりになるのであったから、若菜の賀を姫宮から奉らせようかと院はお思いつきになって、それに付帯した法会《ほうえ》の布施《ふせ》にお出しになる法服の仕度《したく》をおさせになり、すべて精進でされる御宴会の用意であるから普通のことと変わって、苦心の払われることを今からお指図《さしず》になっていた。昔から音楽がことにお好きな方であったから、舞の人、楽の人にすぐれたのを選定しようとしておいでになった。右大臣家の下の二人の子、大将の子を典侍腹のも加えて三人、そのほかの御孫も七歳以上の皆殿上勤めをさせておいでに
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