そばすようなことは恐縮なされるだけではないかと拝察されまして、こちら様の御質素な御計画はかえって御満足になることかと存ぜられます」
 と衛門督《えもんのかみ》が申すと、華奢《かしゃ》を尽くしてお目にかけたという前日の賀宴を女二の宮の関係でしたとは言わずに、父のためにしたと話すのに心の鍛錬のできていることがうかがわれると院は思召された。
「私の所でやらせていただくことはこのとおりに簡単なことであるのを見て、一概に悪く言う人もあるであろうと思っていたが、理解のあるお言葉を聞いて、さすがにとあなたにはいよいよ敬意が払われる。大将は役人としては少しは経験ができたようでも、そうした繊細な観察をすることなどは、得意でもないだろうがいっこうだめですよ。法皇はあらゆる芸術に通じておいでになるが、その中でも最も音楽の御|造詣《ぞうけい》が深いから、それらに遠ざかっておいでになる御出家後といえども院が御覧になるのだと思うと晴れがましいのですよ。あの大将といっしょに、舞い手になる子供へ、心得べきことをよく注意しておいてくれたまえ。専門家の師匠というものは自身の芸には偉くても融通のきかないものだから」
 など
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