を思召すとお胸が鳴るのでもあった。人生のことが今さら皆お恨めしくて、紫夫人の病気のころは院があちらにばかり行っておいでになったのを、もっともなこととはいえ、思いやりのないこととして聞いておいでになったが、夫人の病後も院の御訪問はまれになったというのは、その間に不祥なことが起こったのではあるまいか。宮が自発的に堕落の傾向をおとりになったのではなく、軽薄な女房の仕業《しわざ》などで不快な事件があったのではなかろうか、宮廷における男女の間は清潔な交際で終始しなければならないものであるのに、その中にさえ醜聞を作る者があるのであるからと、こんなことまでも御想像あそばされるのは、いっさいをお捨てになった御心境にもなお御子をお思いになる愛情だけは影を残しているからである。法皇が愛のこもったお手紙を宮へお書きになったのを、六条院も来ておいでになる時で拝見されたのであった。
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用事もないものですから無沙汰《ぶさた》をしているうちに月日がたつということもこの世の悲しみです。あなたが普通でない身体《からだ》になって健康もそこねているということをくわしく聞きましたが、今はどうですか。世の
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