あったから、その問題に触れて仰せられることかと気がついたものの、呑《の》み込み顔なお返辞はできないことであった。ただ、
「つまらない者でございますから、配偶者を得ますこともとかく困難でございまして」
 と申し上げるのにとどめた。
 のぞき見をしていた若い女房たちが、
「珍しい美男でいらっしゃる。御様子だってねえ、なんというごりっぱさでしょう」
 集まってこんなことを言っているのを、聞いていた老《ふ》けたほうに属する女房らが、
「それでも六条院様のあのお年ごろのおきれいさというものはそんなものではありませんでしたよ。比較には、まあなりませんね、それはね、目もくらんでしまうほどお美しかったものですよ」
 と言っても、若い人たちは承知をしない。こうした争いのお耳にはいった院が、
「そのとおりだよ。あの人の美は普通の美の標準にはあてはまらないものだった。近ごろはまたいっそうりっぱになられて光彩そのもののような気がする。正しくしていられれば端麗であるし、打ち解けて冗談《じょうだん》でも言われる時には愛嬌《あいきょう》があふれて、二人とないなつかしさが出てくる。何事にもどうした前生の大きな報いを得
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