しそうにばかりあなたがするから、私はたまらなく苦しくなる。もっと荒削りに、私を打つとか捻《ひね》るとかして懲らしてくれたらどうですか。あなたにそうした水くさい態度をとらせるようには暮らして来なかったはずだが、妙にあなたは変わってしまいましたね」
などとも言って、機嫌《きげん》をお取りになるうちには前夜の真相も打ちあけて話しておしまいになることになった。姫宮のほうへお出かけにならずに、夫人をなだめるのに終日かかっておいでになった。それを宮は何ともお思いにならないのであるが、乳母たちだけは不快がっていろいろと言っていた。嫉妬《しっと》をお持ちになる傾向が宮にもあれば院はまして苦しい立場になるのであるが、おっとりとした少女《おとめ》の宮を、人形のように気楽にお扱いになることはできるのであった。
東宮へ上がっておいでになる桐壺《きりつぼ》の方は退出を長く東宮がお許しにならぬので、姫君時代の自由が恋しく思われる若い心にはこれを苦しくばかり思うのであった。夏ごろになっては健康もすぐれなくなったのであるが、なおも帰るお許しがないので困っていた。これは妊娠であったのである。まだ十四、五の小さい人で
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