お美しさに、この日はじめて近づいた女房は興奮していた。老いた女房などの中には、なんといっても幸福な奥様はあちらのお一方だけで、宮は御不快な目にもおあいになるのであろうと、こんなことを思う者もあった。姫宮は可憐《かれん》で、たいそうなお居間の装飾などとは調和のとれぬ何でもない無邪気な少女《おとめ》で、お召し物の中にうずもれておしまいになったような小柄な姿を持っておいでになるのである。格別恥ずかしがってもおいでにならない。人見知りをせぬ子供のようであつかいやすい気を院はお覚えになった。朱雀《すざく》院は重い学問のほうは奥を究《きわ》めておいでになると言われておいでにならないが、芸術的な趣味の豊かな方としてすぐれておいでになりながら、どうして御愛子をこう凡庸に思われるまでの女にお育てになったかと院は残念な気もあそばされたのであるが、御愛情が起こらないのでもなかった。院のお言いになるままになってなよなよとおとなしい。お返辞なども習っておありになることだけは子供らしく皆言っておしまいになって、自発的には何もおできにならぬらしい。昔の自分であれば厭気《いやき》のさしてしまう相手であろうが、今日にな
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