かな性質の夫人もこれくらいのことは心の蔭《かげ》では思われたのであった。今になってはもう幸福であることを疑わなかった自分であった。思い上がって暮らした自分が今後はどんな屈辱に甘んじる女にならねばならぬかしれぬと紫の女王は愁《うれ》いながらもおおようにしていた。
 春になった。朱雀《すざく》院では姫宮の六条院へおはいりになる準備がととのった。今までの求婚者たちの失望したことは言うまでもない。帝《みかど》も後宮にお入れになりたい思召《おぼしめ》しを伝えようとしておいでになったが、いよいよ今度のお話の決定したことを聞こし召されておやめになった。六条院はこの春で四十歳におなりになるのであったから、内廷からの賀宴を挙行させるべきであると、帝も春の初めから御心《みこころ》にかけさせられ、世間でも御賀を盛んにしたいと望む人の多いのを、院はお聞きになって、昔から御自身のことでたいそうな式などをすることのおきらいな方だったから話を片端から断わっておいでになった。
 正月の二十三日は子《ね》の日であったが、左大将の夫人から若菜《わかな》の賀をささげたいという申し出があった。少し前まではまったく秘密にして用
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