きなどをいたすかしれません」
 小侍従は笑いながらこう言うのであった。
「いやなことを言う人ね、おまえは」
 無心なふうにそうお言いになって、宮は小侍従の拡《ひろ》げた手紙をお読みになった。「見ずもあらず見もせぬ人の恋しくてひねもす今日はながめ暮らしつ」という古歌を引いて書いてある所を御覧になった時に、蹴鞠《けまり》の日の御簾《みす》の端の上がっていたことを思い出すことがおできになり、お顔が赤くなった。院が何度も、
「大将に見られないようになさい。あまりにあなたは幼稚にできていらっしゃるから、うっかりとしていてのぞかれることもあるでしょうから」
 こうお誡《いまし》めになったのをお思い出しになり、大将からあの時のことが言われた時、院から自分はどんなにお叱《しか》りを受けることであろうと、手紙の主が見たことなどは問題にもあそばさずに、それを心配あそばしたのは幼いお心の宮様である。平生よりもものをお言いにならず黙っておしまいになったのを見て、小侍従はつぎほのない気がしたし、この上しいて申し上げてよいことでもなかったから、そっと手紙を持って行った。そして忍んで返事を書いた。
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