た。明石は非常にうれしく思い、長い間の願いの実現される気がして、自身の女房たちの衣裳《いしょう》その他の用意を、紫夫人のするのに劣らず派手《はで》に仕度《したく》し始めた。姫君の祖母の尼君は姫君の出世をどこまでも観望したいと願っていた。そしてもう一度だけ顔を見たいと思う心から生き続けているのを、明石は哀れに思っていた。その機会だけは得られまいと思うからである。最初は紫夫人が付き添って行った。紫夫人には輦車《れんしゃ》も許されるであろうが、自身には御所のある場所を歩いて行かねばならない不体裁のあることなども、明石は自身のために歎《なげ》かずに源氏夫婦が磨《みが》きたてて太子に奉る姫君に、自分という生母のあることが玉の瑕《きず》と見られるに違いないと心苦しがっていた。姫君が上がる式に人目を驚かすような華奢《かしゃ》はしたくないと源氏は質素にしたつもりであったが、やはり並み並みのこととは見えなかった。限りもなく美しく姫君を仕立てて、紫夫人は真心からかわいくながめながらも、これを生母に譲らねばならぬようなことがなくて、真実の子として持ちたかったという気がした。源氏も宰相中将もこの一点だけを飽き
前へ
次へ
全33ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング