度をとり過ぎて、ついにはすっかり負けて出たということで世間は何かと評をするだろう。しかしあまり優越感を持ち過ぎて慢心的に放縦なほうへ転向することのないようにしなくてはならない。今度の態度は寛大であっても、大臣の性格は、生一本でなくて気むずかしい点があるのだからね」
 などとまた源氏は教訓した。円満な結果を得て、宰相中将につりあいのよい妻のできたことで源氏は満足しているのである。宰相中将は子のようにも見えなかった。少し年上の兄というほどに源氏は見えるのである。別々に見る時は同じ顔を写し取ったように思われる中将と源氏の並んでいるのを見ると、二人の美貌《びぼう》には異なった特色があった。源氏は薄色の直衣《のうし》の下に、白い支那《しな》風に見える地紋のつやつやと出た小袖《こそで》を着ていて、今も以前に変わらず艶《えん》に美しい。宰相中将は少し父よりは濃い直衣に、下は丁字《ちょうじ》染めのこげるほどにも薫物《たきもの》の香を染《し》ませた物や、白やを重ねて着ているのが、顔をことさら引き立てているように見えた。今日は御所からもたらされて灌仏《かんぶつ》が六条院でもあることになっていたが、導師の来
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