ら困るのです」
と言って、斎院へ今書いた歌をまた紙にしたためて宮へお見せした。
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花の枝《え》にいとど心をしむるかな人のとがむる香をばつつめど
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というのであるらしい。
「少し物好きなようですが、一人娘の成年式だからやむをえないと自分では定《き》めまして、こうした騒ぎをしているのですが、ほめたことではありませんから、ほかの方を頼むことはやめまして、中宮《ちゅうぐう》を御所から退出していただいて腰|結《ゆ》いをお願いしようと思っています。一家の方になっていらっしゃっても、晴れがましい気のする人格を持っておられますから、並み並みの儀式にしておいてはもったいない気がするのです」
などと源氏は言っていた。
「そうですね。あやかる人は選ばねばなりませんね。それにはこの上もない方ですよ」
と宮は源氏の計らいの当を得ていることをお言いになった。前斎院から香の届けられたことと、宮のおいでになったのを機会にして、夫人らの調製した薫香《くんこう》も取り寄せる使いが出された。
「湿りけのある今日の空気が香の試験に適していると思いますから」
と言いや
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