い物のほうに芸術的なものが多い」
 といって、式場用の物の覆《おおい》、敷き物、褥《しとね》などの端を付けさせるものなどに、故院の御代《みよ》の初めに朝鮮人が献《ささ》げた綾《あや》とか、緋金錦《ひごんき》とかいう織物で、近代の物よりもすぐれた味わいを持った切れ地のそれぞれの使い場所を決めたりした。今度大弐のほうから来た綾や薄物は他へ分けて贈った。香の原料に昔のと今のとを両方取り混ぜて六条院内の夫人たちと、源氏の尊敬する女友だちに送って、二種類ずつの薫香を作られたいと告げた。裳着の式日の贈り物、高官たちへの纏頭《てんとう》の衣服類の製作を手分けして各夫人の所でしているかたわらで、またそれぞれ撰《えら》び出した香の原料の鉄臼《かなうす》でひかれる音も立って忙しい気のされるころであった。源氏は南の町の寝殿へ、夫人の所から離れてこもりながら、どうして習得したのか承和の帝《みかど》の秘法といわれる二つの合わせ方で熱心に薫香を作っていた。夫人は東の対《たい》のうちの離れへ人を避ける設備をして、そこで八条の式部卿《しきぶきょう》の宮の秘伝の法で香を作っていた。こうして夫婦の中にも、秘密をうかがわれ
前へ 次へ
全26ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング