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巣隠れて数にもあらぬ雁《かり》の子をいづ方にかはとりかくすべき
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御機嫌《ごきげん》をそこねておりますようですからこんなことを申し上げます。風流の真似《まね》をいたし過ぎるかもしれません。
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大将の書いたものはこうであった。
「この人が戯談《じょうだん》風に書いた手紙というものは珍品だ」
と源氏は笑ったが、心の中では玉鬘をわが物顔に言っているのを憎んだ。
もとの大将夫人は月日のたつにしたがって憂鬱《ゆううつ》になって、放心状態でいることも多かった。生活費などはこまごまと行き届いた仕送りを大将はしていた。子供たちをも以前と同じように大事がって育てていたから、前夫人の心は良人《おっと》からまったく離れず唯一の頼みにもしていた。大将は姫君を非常に恋しがって逢いたく思うのであったが、宮家のほうでは少しもそれを許さない。少女の心には自身の愛する父を祖父も祖母も皆口をそろえて悪く言い、ますます逢わせてもらう可能性がなくなっていくのを心細がっていた。男の子たちは始終|訪《たず》ねて来て、尚侍《ないしのかみ》の様子なども話して、
「
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