にもほかの対に離れていて、子供たちを呼び寄せて見るだけを楽しみにしていた。女の子が一人あって、それは十二、三になっていた。そのあとに男の子が二人あった。近年はもう夫婦の間も隔たりがちに暮らしていたが、ただ一人の夫人として尊重することは昔に変わらなかったのが、こんなふうになったのであるから、夫人ももう最後の時が来たのだと思うし、女房たちもそう見て悲しむよりほかはなかった。
父宮がそのことをお聞きになって、
「そんな冷酷な扱いを受けてもまだ辛抱《しんぼう》強くあなたはしているのですか。それは自尊心も名誉心もない女のすることです。私の生きている間はまだあなたはそう奴隷的になっていないでもいいのです」
と言うお言葉をお伝えさせになって、にわかに迎えをお立てになった。夫人はやっと常態になっていて、自身の不幸な境遇を悲しんでいる時に、このお言葉を聞いたのであったから、今になってまだ父宮のお言葉に従わずここにいて、まったく良人から捨てられてしまう日を待つことは、現在以上の恥になることであろうなどと思って、実家へ行くことにしたのであった。夫人の弟の公子たちは、左兵衛督《さひょうえのかみ》は高官であ
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