遠慮いたされまして、あまりにわかな変わり方は見せられないように思うものですから、お話し申し上げたい長い年月のことも、聞いていただけませんことで、私もお言葉のように残念でならないのでございます」
 ときまじめな挨拶《あいさつ》をされ、頭の中将はきまりが悪くなって、この上のことは言わないことにした。

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「妹背《いもせ》山深き道をば尋ねずてをだえの橋にふみまどひける
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 そうでしたよ」
 と真底から感じているふうで中将は言った。

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「まどひける道をば知らず妹背山たどたどしくぞたれもふみ見し
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 と申されます」
 と女主人の歌を伝えてからまた宰相は言う、
「どのことをお言いになりますことかそのころはおわかりにならなかったようでございます。ただあまり御おとなしくて御遠慮ばかりあそばすものですから、どなた様へもお返事をお出しになることがなかったのでございます。これからは決してそうでもございませんでしょう」
 もっともなことでもあったから、
「ではまあよろしいことにしまして、ここで長居をしていましても
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