夜は南の縁側に座を設けて招ぜられた。玉鬘は自身で出て話をすることはまだ恥ずかしくてできずに、返辞だけは宰相の君を取り次ぎにしてした。
「私が使いに選ばれて来ましたのは、お取り次ぎなしにお話を申すようにという父の考えだったかと思いますが、こんなふうな遠々しいお扱いでは、それを申し上げられない気がいたします。私はつまらぬ者ですが、あなたとは離しようもなくつながった縁のありますことで、自信に似たものができております」
と言って、中将はもう一段親しくしたい様子を見せた。
「ごもっともでございます。長い間失礼しておりましたお詫《わ》びも直接申し上げたいのでございますが、身体《からだ》が何ということなしに悪うございまして、起き上がりますのも大儀でできませんものですから、こうさせていただいているのでございます。ただ今のようなお恨みを承りますのは、かえって他人らしいことだと存じます」
まじめな挨拶《あいさつ》を玉鬘はした。
「御気分が悪くてお寝《やす》みになっていらっしゃる所の几帳《きちょう》の前へ通していただけませんか。しかし、よろしゅうございます、しいていろんなお願いをするのも失礼ですから」
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