ある。華美なきらきらしいことが好きで、親への孝行も人目を驚かすようにしたい人なのだね。情味を持ってどうしておあげしようというようなことのできない人なのだよ。複雑な性格で、非常な聡明《そうめい》さで末世の大臣に過ぎた力量のある人だがね。まあそう言えばだれにだって欠点はあるからね」
などと源氏は言うのであった。
「あの大風に中宮《ちゅうぐう》付きの役人は皆出て来ていたか、昨夜《ゆうべ》のことが不安だ」
と言って、源氏は中将を見舞いに出すのであった。
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昨晩の風のきついころはどうしておいでになりましたか。私は少しそのころから身体《からだ》の調子がよろしゅうございませんのでただ今はまだ伺われません。
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という挨拶《あいさつ》を持たせてやったのである。そこを立ち廊の戸を通って中宮の町へ出て行く若い中将の朝の姿が美しかった。東の対の南側の縁に立って、中央の寝殿を見ると、格子が二間ほどだけ上げられて、まだほのかな朝ぼらけに御簾《みす》を巻き上げて女房たちが出ていた。高欄によりかかって庭を見ているのは若い女房ばかりであった。打ち解けた姿でこうしたふう
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