大臣の住居《すまい》辺はおおぜいの人が詰めているであろうが、東の町などは人少なで花散里《はなちるさと》夫人は心細く思ったことであろうと中将は驚いて、まだほのぼの白《しら》むころに三条の宮から訪《たず》ねに出かけた。横雨が冷ややかに車へ吹き込んで来て、空の色もすごい道を行きながらも中将は、魂が何となく身に添わぬ気がした。これはどうしたこと、また自分には物思いが一つふえることになったのかと慄然《りつぜん》とした。これほどあるまじいことはない、自分は狂気したのかともいろいろに苦しんで六条院へ着いた中将は、すぐに東の夫人を見舞いに行った。非常におびえていた花散里をいろいろと慰めてから、家司《けいし》を呼んで損《そこ》ねた所々の修繕を命じて、それから南の町へ行った。まだ格子は上げられずに人も起きていなかったので、中将は源氏の寝室の前にあたる高欄によりかかって庭をながめていた。風のあとの築山《つきやま》の木が被害を受けて枝などもたくさん折れていた。草むらの乱れたことはむろんで、檜皮《ひわだ》とか瓦《かわら》とかが飛び散り、立蔀《たてじとみ》とか透垣《すきがき》とかが無数に倒れていた。わずかだけさし
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