れるのであった。女にはどうして勝負が決まるのかも知らぬことであったが、舎人《とねり》までが艶《えん》な装束をして一所懸命に競技に走りまわるのを見るのはおもしろかった。南御殿の横まで端は及んでいたから、紫夫人のほうでも若い女房などは見物していた。「打毬楽《だきゅうらく》」「納蘇利《なそり》」などの奏楽がある上に、右も左も勝つたびに歓呼に代えて楽声をあげた。夜になって終わるころにはもう何もよく見えなかった。左近衛府《さこんえふ》の舎人《とねり》たちへは等差をつけていろいろな纏頭《てんとう》が出された。ずっと深更になってから来賓は退散したのである。源氏は花散里のほうに泊まるのであった。いろいろな話が夫人とかわされた。
「兵部卿の宮はだれよりもごりっぱなようだ。御容貌などはよろしくないが、身の取りなしなどに高雅さと愛嬌《あいきょう》のある方だ。そのほかはよいと言われている人たちにも欠点がいろいろある」
「あなたの弟様でもあの方のほうが老《ふ》けてお見えになりますね。こちらへ古くからよくおいでになると聞いていましたが、私はずっと昔に御所で隙見《すきみ》をしてお知り申し上げているだけですから、今日
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