がおもしろかった。蝶《ちょう》ははかないふうに飛び交《か》って、山吹が垣《かき》の下に咲きこぼれている中へ舞って入る。中宮の亮《すけ》をはじめとしてお手伝いの殿上役人が手に手に宮の纏頭《てんとう》を持って童女へ賜わった。鳥には桜の色の細長、蝶へは山吹襲《やまぶきがさね》をお出しになったのである。偶然ではあったがかねて用意もされていたほど適当な賜物《たまもの》であった。伶人《れいじん》への物は白の一襲《ひとかさね》、あるいは巻き絹などと差があった。中将へは藤《ふじ》の細長を添えた女の装束をお贈りになった。中宮のお返事は、
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昨日は泣き出したくなりますほどうらやましく思われました。

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こてふにも誘はれなまし心ありて八重山吹を隔てざりせば
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 というのであった。すぐれた貴女《きじょ》がたであるが歌はお上手《じょうず》でなかったのか、ほかのことに比べて遜色《そんしょく》があるとこの御贈答などでは思われる。昨日のことであるが、招かれて行った女房たちの、中宮のほうから来た人たちには意匠のおもしろい贈り物がされたのであった。そん
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