傍点]が出て応接した。
「お亡《かく》れになった少弐は人情味のたっぷりとあるりっぱなお役人でしたからぜひ御懇親を願いたいと思いながら、こちらの尊敬心をお見せできなかったうちにお気の毒に死んでおしまいになったから、そのかわりに御遺族へ敬意を表しようと思って、奮発して、一所懸命になって、しいて参りました。こちらにおいでになる姫君が御身分のいいことを私は聞いていて、尊敬申してますが、妻になっていただきたいのだ。我輩《わがはい》は一家の御主人と思って頭の上へ載せんばかりにしてですね、大事にいたしますよ。あなたがこの縁組みにあまり御賛成にならないというのは、私がこれまで幾人《いくたり》ものつまらない女と関係してきたことで、いやがられているのではありませんか。たとえそんな女どもが私についているとしても、そいつらに姫君といっしょの扱いなどをするものですかい。我輩は姫君を后《きさき》の位から落とすつもりはない」
などと勝手なことを監《げん》は言い続けた。
「いえ、不賛成などと、そんなことはありません。非常に結構なお話だと私は思っているのですがね。何という不運なのでしょう、あの人は並み並みに一人前の女
前へ
次へ
全56ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング