「成功すれば、両家は力になり合って、あなたがたに武力の後援を惜しむものですか」
 などと言ってくれる監《げん》に二人の息子だけは好意を持ちだした。
「私たちも初めは不似合いな求婚者だ、お気の毒だと姫君のことを思ってましたが、考えてみると、自分たちの後ろ立てにするのには最も都合のいい有力な男ですから、この人に敵対をされては肥前あたりで何をすることも不可能だということがわかってきました。貴族の姫君だと言っても、父君が打っちゃってお置きになるし、世間からも認められていないではしかたがありません。こんなに熱心になっている監と結婚のできるのはかえって幸福だと思いますよ。この宿命のあるために九州などへ姫君がおいでになることにもなったのでしょう。逃げ隠れをなすっても何になるものですか。負けてなんかいませんからね、監は。常識で考えられる以上の無茶なことでも監はしますよ」
 と兄弟は家族をおどすのである。長兄の豊後介《ぶんごのすけ》だけは監の味方でなかった。
「もったいないことだ。少弐の御遺言があるのだから、自分はどうしてもこの際姫君を京へお供しましょう」
 と母や妹に言う。女たちも皆泣いて心配して
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