なっていった。大人《おとな》になった姫君は、自身の運命を悲しんで一年の三度の長精進などもしていた。二十《はたち》ぐらいになるとすべての美が完成されて、まばゆいほどの人になった。この少弐《しょうに》一家のいる所は肥前の国なのである。その辺での豪族などは、少弐の孫の噂《うわさ》を聞いて、今でも絶えず結婚を申し込んでくる、うるさいほどに。
 大夫《たゆう》の監《げん》と言って肥後に聞こえた豪族があった。その国ではずいぶん勢いのある男で、強大な武力を持っているのである。そんな田舎武士《いなかざむらい》の心にも、好色的な風流気があって、美人を多く妻妾《さいしょう》として集めたい望みを持っているのである。少弐家の姫君のことを大夫の監は聞きつけて、
「どんな不具なところがあっても、自分はその点を我慢することにして妻にしたい」
 と懇切に求婚をしてきた。少弐の人たちは恐ろしく思った。
「どんないい縁談にも彼女は耳をかさないで尼になろうとしています」
 と中に立った人から断わらせた。それを聞くと監は不安がって、自身で肥前へ出て来た。少弐家の息子たちを監は旅宿へ呼んで姫君との縁組みに助力を求めるのであった
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