は侮辱されたのに似たような気が少しした。空蝉《うつせみ》の尼君には青鈍《あおにび》色の織物のおもしろい上着を見つけ出したのへ、源氏の服に仕立てられてあった薄黄の服を添えて贈るのであった。同じ日に着るようにとどちらへも源氏は言い添えてやった。自身の選定した物がしっくりと似合っているかを源氏は見に行こうと思うのである。
夫人たちからはそれぞれの個性の見える返事が書いてよこされ、使いへ出した纏頭《てんとう》もさまざまであったが、末摘花は東の院にいて、六条院の中のことでないから纏頭などは気のきいた考えを出さねばならぬのに、この人は形式的にするだけのことはせずにいられぬ性格であったから纏頭も出したが、山吹色の袿《うちぎ》の袖口《そでぐち》のあたりがもう黒ずんだ色に変色したのを、重ねもなく一枚きりなのである。末摘花女王《すえつむはなにょおう》の手紙は香の薫《かお》りのする檀紙《だんし》の、少し年数物になって厚く膨《ふく》れたのへ、
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どういたしましょう、いただき物はかえって私の心を暗くいたします。
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着て見ればうらみられけりから衣《ごろも》かへしやり
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