源氏は見比べて、濃い紅《べに》、朱の色などとさまざまに分けて、それを衣櫃《ころもびつ》、衣服箱などに添えて入れさせていた。高級な女房たちがそばにいて、これをそれに、それをこれにというように源氏の命じるままに贈り物を作っているのであった。夫人もいっしょに見ていて、
「皆よくできているのですから、お召しになるかたのお顔によく似合いそうなのを見立てておあげなさいまし。着物と人の顔が離れ離れなのはよくありませんから」
と言うと、源氏は笑って、
「素知らぬ顔であなたは着る人の顔を想像しようとするのですね。それにしてもあなたはどれを着ますか」
と言った。
「鏡に見える自分の顔にはどの着物を着ようという自信も出ません」
さすがに恥ずかしそうに言う女王であった。紅梅色の浮き模様のある紅紫の小袿《こうちぎ》、薄い臙脂紫《えんじむらさき》の服は夫人の着料として源氏に選ばれた。桜の色の細長に、明るい赤い掻練《かいねり》を添えて、ここの姫君の春着が選ばれた。薄いお納戸色に海草貝類が模様になった、織り方にたいした技巧の跡は見えながらも、見た目の感じの派手《はで》でない物に濃い紅の掻練を添えたのが花散里《は
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