したものらしく、衣服係の所にできていた物も皆取り寄せて、色の調子、重ねの取り合わせの特にすぐれた物を選んで贈ったのであったから、九州の田舎《いなか》に長くいた人々の目に珍しくまばゆい物と映ったのはもっともなことである。姫君自身は、こんなりっぱな品々でなくても、実父の手から少しの贈り物でも得られたのならうれしいであろうが、知らない人と交渉を始めようなどとは意外であるというように、それとなく言って、贈り物を受けることを苦しく思うふうであったが、右近は母君と源氏との間に結ばれた深い因縁を姫君に言って聞かせた。人々も横から取りなした。
「そうして源氏の大臣の御厚意でごりっぱにさえおなりになりましたなら、内大臣様のほうからもごく自然に認めていただくことができます。親子の縁と申すものは絶えたようでも絶えないものでございます。右近でさえお目にかかりたいと一心に祈っていました結果はどうでございます。神仏のお導きがあったではございませんか。御双方ともお身体《からだ》さえお丈夫でいらっしゃればきっとお逢《あ》いになれる時がまいります」
 とも慰めるのである。まず早く返事をと言って皆がかりで姫君を責めて書か
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