、醜いこととは思えなかった。そうした場合がなつかしかった。こんなに皆に騒がれることが至当なこととは思われないのであるが、乳母などからひどい小言《こごと》を言われたあとでは、手紙を書いて送ることもできなかった。大人はそんな中でも隙《すき》をとらえることが不可能でなかろうが、相手の若君も少年であって、ただ残念に思っているだけであった。
内大臣はそれきりお訪《たず》ねはしないのであるが宮を非常に恨めしく思っていた。夫人には雲井の雁の姫君の今度の事件についての話をしなかったが、ただ気むずかしく不機嫌《ふきげん》になっていた。
「中宮がはなやかな儀式で立后後の宮中入りをなすったこの際に、女御《にょご》が同じ御所でめいった気持ちで暮らしているかと思うと私はたまらないから、退出させて気楽に家《うち》で遊ばせてやりたい。さすがに陛下はおそばをお離しにならないようにお扱いになって、夜昼上の御局《みつぼね》へ上がっているのだから、女房たちなども緊張してばかりいなければならないのが苦しそうだから」
こう夫人に語っている大臣はにわかに女御退出のお暇を帝《みかど》へ願い出た。御|寵愛《ちょうあい》の深い人で
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