日こんなことを思いました。
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かけきやは川瀬の波もたちかへり君が御禊《みそぎ》の藤《ふぢ》のやつれを
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紫の紙に書いた正しい立文《たてぶみ》の形の手紙が藤の花の枝につけられてあった。斎院はものの少し身にしむような日でおありになって、返事をお書きになった。
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藤衣きしは昨日《きのふ》と思ふまに今日《けふ》はみそぎの瀬にかはる世を
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はかないものと思われます。
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とだけ書かれてある手紙を、例のように源氏は熱心にながめていた。斎院が父宮の喪の済んでお服直しをされる時も、源氏からたいした贈り物が来た。女王《にょおう》はそれをお受けになることは醜いことであるというように言っておいでになったが、求婚者としての言葉が添えられていることであれば辞退もできるが、これまで長い間何かの場合に公然の進物を送り続けた源氏であって、親切からすることであるから返却のしようがないように言って女房たちは困っていた。女五《にょご》の宮《みや》のほうへもこんなふうにして始終物質的に御補助をする源氏で
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