源氏物語
乙女
紫式部
與謝野晶子訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)雁《かり》なく

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)式部|大輔《だゆう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「風+(火/(火+火)」、第3水準1−94−8]

 [#…]:返り点
 (例)孟嘗遭[#二]雍門[#一]
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[#地から3字上げ]雁《かり》なくやつらをはなれてただ一つ初恋
[#地から3字上げ]をする少年のごと     (晶子)

 春になって女院の御一周年が過ぎ、官人が喪服を脱いだのに続いて四月の更衣期になったから、はなやかな空気の満ち渡った初夏であったが、前斎院はなお寂しくつれづれな日を送っておいでになった。庭の桂《かつら》の木の若葉がたてるにおいにも若い女房たちは、宮の御在職中の加茂の院の祭りのころのことを恋しがった。源氏から、神の御禊《みそぎ》の日もただ今はお静かでしょうという挨拶《あいさつ》を持った使いが来た。
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