てすべての世界が白く見える中に、植え込みの灌木《かんぼく》類の押しつけられた形だけが哀れに見え、流れの音も咽《むせ》び声になっている。池の氷のきらきら光るのもすごかった。源氏は童女を庭へおろして雪まろげをさせた。美しい姿、頭つきなどが月の光にいっそうよく見えて、やや大きな童女たちが、いろいろな袙《あこめ》を着て、上着は脱いだ結び帯の略装で、もうずっと長くなっていて、裾《すそ》の拡《ひろ》がった髪は雪の上で鮮明にきれいに見られるのであった。小さい童女は子供らしく喜んで走りまわるうちには扇を落としてしまったりしている。ますます大きくしようとしても、もう童女たちの力では雪の球《たま》が動かされなくなっている。童女の半分は東の妻戸の外に集まって、自身たちの出て行けないのを残念がりながら、庭の連中のすることを見て笑っていた。
「昔|中宮《ちゅうぐう》がお庭に雪の山をお作らせになったことがある。だれもすることだけれど、その場合に非常にしっくりと合ったことをなさる方だった。どんな時にもあの方がおいでになったらと、残念に思われることが多い。私などに対して法《のり》を越えた御待遇はなさらなかったから、細かなことは拝見する機会もなかったが、さすがに尊敬している私を信用はしていてくだすった。私は何かのことがあると歌などを差し上げたが、文学的に見て優秀なお返事でないが、見識があるというよさはおありになって、お言いになることが皆深みのあるものだった。あれほど完全な貴女《きじょ》がほかにもあるとは思われない。柔らかに弱々しくいらっしゃって、気高《けだか》い品のよさがあの方のものだったのですからね。しかしあなただけは血縁の近い女性だけあってあの方によく似ている。少しあなたは嫉妬《しっと》をする点だけが悪いかもしれないね。前斎院の性格はまたまったく変わっておいでになる。私の寂しい時に手紙などを書く交際相手で敬意の払われる、晴れがましい友人としてはあの方だけがまだ残っておいでになると言っていいでしょう」
 と源氏が言った。
「尚侍《ないしのかみ》は貴婦人の資格を十分に備えておいでになる、軽佻《けいちょう》な気などは少しもお見えにならないような方だのに、あんなことのあったのが、私は不思議でならない」
「そうですよ。艶《えん》な美しい女の例には、今でもむろん引かねばならない人ですよ。そんなことを思うと自
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