はどんな難儀になりましても後悔などはいたしません。仏様からこの告白はお勧めを受けてすることでございます。陛下がお妊《はら》まれになりました時から、故宮はたいへんな御心配をなさいまして、私に御委託あそばしたある祈祷《きとう》がございました。くわしいことは世捨て人の私に想像ができませんでございました。大臣《おとど》が一時失脚をなさいまして難儀にお逢《あ》いになりましたころ宮の御恐怖は非常なものでございまして、重ねてまたお祈りを私へ仰せつけになりました。大臣《おとど》がそれをお聞きになりますと、また御自身のほうからも同じ御祈祷をさらに増してするようにと御下命がございまして、それは御位にお即《つ》きあそばすまで続けました祈祷でございました。そのお祈りの主旨はこうでございました」
と言って、くわしく僧都の奏上するところを聞こし召して、お驚きになった帝の御心《みこころ》は恥ずかしさと、恐しさと、悲しさとの入り乱れて名状しがたいものであった。何とも仰せがないので、僧都は進んで秘密をお知らせ申し上げたことを御不快に思召すのかと恐懼《きょうく》して、そっと退出しようとしたのを、帝はおとどめになった。
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