め》は紅の裏に藤襲《ふじがさね》の厚織物で、からだのとりなしがきわめて優美である。右は沈の木の箱に浅香《せんこう》の下机《したづくえ》、帛紗は青地の高麗錦《こうらいにしき》、机の脚《あし》の組み紐《ひも》の飾りがはなやかであった。侍童らは青色に柳の色の汗袗《かざみ》、山吹襲《やまぶきかさね》の袙《あこめ》を着ていた。双方の侍童がこの絵の箱を御前に据《す》えたのである。源氏の内大臣と権中納言とが御前へ出た。太宰帥《だざいのそつ》の宮も召されて出ておいでになった。この方は芸術に趣味をお持ちになる方であるが、ことに絵画がお好きであったから、初めに源氏からこのお話もしてあった。公式のお召しではなくて、殿上の間に来ておいでになったのに仰せが下ったのである。この方に今日の審判役を下命された。評判どおりに入念に描《か》かれた絵巻が多かった。優劣をにわかにお決めになるのは困難なようである。例の四季を描いた絵も、大家がよい題材を選んで筆力も雄健に描き流した物は価値が高いように見えるが、今度は皆紙絵であるから、山水画の豊かに描かれた大作などとは違って、凡庸な者に思われている今の若い絵師も昔の名画に近い物を
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