かと思うと、すぐにもうその夢は消えてしまうじゃないか。お母《かあ》さん、お祖母《ばあ》さん、今度は良人《おっと》という順にだれにも短い縁よりない人らしい」
と言った言葉を、宮のお邸《やしき》の事情をよく知っている人があって話したので、女王は情けなく恨めしく思って、こちらからも音信をしない絶交状態であって、そのほかにはだれ一人たよりになる人を持たない孤独の女王であった。
「私がいつまでも現状に置かれるのだったら、どんなひどい侘《わ》び住居《ずまい》であってもあなたを迎えます。今それを実行することは人聞きが穏やかでないから、私は遠慮してしないだけです。勅勘の人というものは、明るい日月の下へ出ることも許されていませんからね。のんきになっていては罪を重ねることになるのです。私は犯した罪のないことは自信しているが、前生の因縁か何かでこんなことにされているのだから、まして愛妻といっしょに配所へ行ったりすることは例のないことだから、常識では考えることもできないようなことをする政府にまた私を迫害する口実を与えるようなものですからね」
などと源氏は語っていた。昼に近いころまで源氏は寝室にいたが、その
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