源氏物語

紫式部
與謝野晶子訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)窮屈《きゅうくつ》さ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|除《の》けさせた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
−−

[#地から3字上げ]恨めしと人を目におくこともこそ身の
[#地から3字上げ]おとろへにほかならぬかな (晶子)

 天子が新しくお立ちになり、時代の空気が変わってから、源氏は何にも興味が持てなくなっていた。官位の昇進した窮屈《きゅうくつ》さもあって、忍び歩きももう軽々しくできないのである。あちらにもこちらにも待って訪《と》われぬ恋人の悩みを作らせていた。そんな恨みの報いなのか源氏自身は中宮《ちゅうぐう》の御冷淡さを歎《なげ》く苦しい涙ばかりを流していた。位をお退《ひ》きになった院と中宮は普通の家の夫婦のように暮らしておいでになるのである。前《さき》の弘徽殿《こきでん》の女御《にょご》である新皇太后はねたましく思召《おぼしめ》すのか、院へはおいでにならずに当帝の御所にばかり行っておいでになったから、いどみ
次へ
全64ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング