があっても好意が持たれるのに、ましてこれほどの美貌《びぼう》の主であったかと思うと一種の感激を覚えた。けれどもそれは結婚をしてもよい、愛に報いようとまでする心の動きではなかった。宮の若い女房たちは聞き苦しいまでに源氏をほめた。
翌日の加茂祭りの日に左大臣家の人々は見物に出なかった。源氏に御禊《みそぎ》の日の車の場所争いを詳しく告げた人があったので、源氏は御息所《みやすどころ》に同情して葵夫人の態度を飽き足らず思った。貴婦人としての資格を十分に備えながら、情味に欠けた強い性格から、自身はそれほどに憎んではいなかったであろうが、そうした一人の男を巡って愛の生活をしている人たちの間はまた一種の愛で他を見るものであることを知らない女主人の意志に習って付き添った人間が御息所を侮辱したに違いない、見識のある上品な貴女である御息所はどんなにいやな気がさせられたであろうと、気の毒に思ってすぐに訪問したが、斎宮がまだ邸《やしき》においでになるから、神への遠慮という口実で逢《あ》ってくれなかった。源氏には自身までもが恨めしくてならない、現在の御息所の心理はわかっていながらも、どちらもこんなに自己を主張す
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