になることだけを許してあげてくださいましね」
と言うと女王は非常に恥ずかしがって、
「私はお話のしかたも知らないのだから」
と言いながら部屋の奥のほうへ膝行《いざ》って行くのがういういしく見えた。命婦は笑いながら、
「あまりに子供らしくいらっしゃいます。どんな貴婦人といいましても、親が十分に保護していてくださる間だけは子供らしくしていてよろしくても、こんな寂しいお暮らしをしていらっしゃりながら、あまりあなたのように羞恥《しゅうち》の観念の強いことはまちがっています」
こんな忠告をした。人の言うことにそむかれない内気な性質の女王は、
「返辞をしないでただ聞いてだけいてもいいというのなら、格子でもおろしてここにいていい」
と言った。
「縁側におすわらせすることなどは失礼でございます。無理なことは決してなさいませんでしょう」
体裁よく言って、次の室との間の襖子《からかみ》を命婦自身が確かに閉《し》めて、隣室へ源氏の座の用意をしたのである。源氏は少し恥ずかしい気がした。人としてはじめて逢《あ》う女にはどんなことを言ってよいかを知らないが、命婦が世話をしてくれるであろうと決めて座につい
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