は好意を表してくる。冷淡な態度を取りうる者はあまりなさそうなのに源氏はかえって失望を覚えた。ある場合条件どおりなのがあっても、それは頭に欠陥のあるのとか、理智《りち》一方の女であって、源氏に対して一度は思い上がった態度に出ても、あまりにわが身知らずのようであるとか思い返してはつまらぬ男と結婚をしてしまったりするのもあったりして、話をかけたままになっている向きも多かった。空蝉《うつせみ》が何かのおりおりに思い出されて敬服するに似た気持ちもおこるのであった。軒端《のきば》の荻《おぎ》へは今も時々手紙が送られることと思われる。灯影《ほかげ》に見た顔のきれいであったことを思い出しては情人としておいてよい気が源氏にするのである。源氏の君は一度でも関係を作った女を忘れて捨ててしまうようなことはなかった。
左衛門《さえもん》の乳母《めのと》といって、源氏からは大弐《だいに》の乳母の次にいたわられていた女の、一人娘は大輔《たゆう》の命婦《みょうぶ》といって御所勤めをしていた。王氏の兵部《ひょうぶ》大輔である人が父であった。多情な若い女であったが、源氏も宮中の宿直所《とのいどころ》では女房のようにして
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