し、また何か悲しいことがあるようにあんなふうにして話していらっしゃる」
腑《ふ》に落ちぬらしく言っていた。
「葬儀はあまり簡単な見苦しいものにしないほうがよい」
と源氏が惟光《これみつ》に言った。
「そうでもございません。これは大層《たいそう》にいたしてよいことではございません」
と否定してから、惟光が立って行こうとするのを見ると、急にまた源氏は悲しくなった。
「よくないことだとおまえは思うだろうが、私はもう一度|遺骸《いがい》を見たいのだ。それをしないではいつまでも憂鬱《ゆううつ》が続くように思われるから、馬ででも行こうと思うが」
主人の望みを、とんでもない軽率なことであると思いながらも惟光は止めることができなかった。
「そんなに思召《おぼしめ》すのならしかたがございません。では早くいらっしゃいまして、夜の更《ふ》けぬうちにお帰りなさいませ」
と惟光は言った。五条通いの変装のために作らせた狩衣《かりぎぬ》に着更《きが》えなどして源氏は出かけたのである。病苦が朝よりも加わったこともわかっていて源氏は、軽はずみにそうした所へ出かけて、そこでまたどんな危険が命をおびやかすかもしれ
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