鵞鳥
幸田露伴

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)格子《こうし》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)近来|大《おおい》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)一※[#小書き片仮名ト、1−6−81]通りでは
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 ガラーリ
 格子《こうし》の開《あ》く音がした。茶の間に居た細君《さいくん》は、誰《だれ》かしらんと思ったらしく、つと立上って物の隙《すき》からちょっと窺《うかが》ったが、それがいつも今頃《いまごろ》帰るはずの夫だったと解《わか》ると、すぐとそのままに出て、
「お帰りなさいまし。」
と、ぞんざいに挨拶《あいさつ》して迎《むか》えた。ぞんざいというと非難するように聞えるが、そうではない、シネクネと身体《からだ》にシナを付けて、語音に礼儀《れいぎ》の潤《うるお》いを持たせて、奥様《おくさま》らしく気取って挨拶するようなことはこの細君の大の不得手《ふえて》で、褒《ほ》めて云《い》えば真率《しんそつ》なのである。それもその
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