う》は学校に臨幸《りんこう》あらせられた。予定のごとく若崎の芸術をご覧あった。最後に至って若崎の鵞鳥は桶の水の中から現われた。残念にも雄の鵞鳥の頸は熔金《ゆ》のまわりが悪くて断《き》れていた。若崎は拝伏《はいふく》して泣いた。供奉《ぐぶ》諸官、及び学校諸員はもとより若崎のあの夜の心の叫《さけ》びを知ろうようは無かった。
しかし、天恩|洪大《こうだい》で、かえって芸術の奥には幽眇《ゆうびょう》不測なものがあることをご諒知《りょうち》下された。正直な若崎はその後しばしば大なるご用命を蒙り、その道における名誉《めいよ》を馳《は》するを得た。
[#地から1字上げ](昭和十四年十二月)
底本:「ちくま日本文学全集 幸田露伴」筑摩書房
1992(平成4)年3月20日第1刷発行
底本の親本:「露伴全集」岩波書店
入力:林 幸雄
校正:門田裕志
2002年12月5日作成
2004年7月8日修正
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