《あと》も留《とど》めなくなった。
 その日はなお種々《いろいろ》のものを喫《きっ》したが、今|詳《くわ》しく思出すことは出来ない。その後のある日にもまた自分が有毒のものを採って叱《しか》られたことを記憶《きおく》しているが、三十余年前のかの晩春の一日《いちじつ》は霞《かすみ》の奥《おく》の花のように楽しい面白かった情景として、春ごとの頭に浮んで来る。
[#地から1字上げ](昭和三年五月)



底本:「ちくま日本文学全集 幸田露伴」筑摩書房
   1992(平成4)年3月20日第1刷発行
底本の親本:「現代日本文学全集4」筑摩書房
入力:林 幸雄
校正:門田裕志
2002年12月5日作成
2010年2月4日修正
青空文庫作成ファイル:
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