盛になれば自然日本の漁夫も遠洋漁業などということになるので、詰り強い奴は遠洋へ出掛けてゆく、弱い奴は地方《ぢかた》近くに働いて居るという訳になるのだろう。
 縄の他に※[#「竹かんむり/奴」、第4水準2−83−37]《ど》を以って魚を捕ってるものもある。縄というのは長い縄へ短い糸の著いた鉤《はり》が著いたもので、此鉤というのは「ヒョットコ鉤」といって、絵に書いたヒョットコの口のようにオツに曲って居る鉤です。此鉤に種々の餌《えさ》を付けて置くので、其餌には蚯蚓や沙蚕《ごかい》も用いる、芋なども用いるが、其他に「ゴソッカイ」だの「エージンボー」だのという、陸《おか》にばかり居る人は名も知らないようなものがある。
 それから又釣をして居る人もある。季節にもよるが、鰻を釣るので「珠数子釣《じゅずごづ》り」というをやらかして居る。これは娯楽にやる人もあり、営業にやる人もある。珠数子釣りは鉤は無くて、餌を綰《わが》ねて輪を作る、それを鰻が呑み込んだのを※[#「てへん+黨」、第3水準1−85−7]網《たま》で掬って捕るという仕方なのだ。面白くないということはないが、さりながら娯楽の目的には、ちと叶わ
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