いて言葉はなく深く礼して叔父に付添《つきそい》立出《たちいず》る二タ足《あし》三足め、又|後《うしろ》ふり向きし其《その》あわれさ、八幡《はちまん》命かけて堪忍ならずと珠運七と呼留《よびと》め、百両物の見事に投出して、亭主お辰の驚《おどろく》にも関《かま》わず、手続《てつづき》油断なく此《この》悪人と善女《ぜんにょ》の縁を切りてめでたし/\、まずは亀屋の養女分となしぬ。
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第六 如是縁《にょぜえん》
上 種子《たね》一粒《いちりゅう》が雨露《うろ》に養わる
自分|妾狂《めかけぐるい》しながら息子《むすこ》の傾城買《けいせいがい》を責《せむ》る人心、あさましき中にも道理ありて、七《しち》の所業|誰《たれ》憎まぬ者なければ、酒|呑《のん》で居ても彼奴《きゃつ》娘の血を吮《す》うて居るわと蔭言《かげごと》され、流石《さすが》の奸物《かんぶつ》も此処《ここ》面白からず、荒屋《あばらや》一《ひ》トつ遺《のこ》して米塩《こめしお》買懸《かいがか》りの云訳《いいわけ》を家主《いえぬし》亀屋《かめや》に迷惑がらせ何処《どこ》ともなく去りける。珠運《しゅうん》も
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