捨てぬ人こそ捨つるなりけれ、たゞ幾重にも御仏を頼み玉へ、心留むべき世も侍らず、南無仏※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]、と云ひ切りて口を結びて復言はず。月はやがて没《い》るべく西に廻りて、御堂に射し入る其光り水かとばかり冷かに、端然として合掌せる二人の姿を浮ぶが如くに御堂の闇の中に照し出しぬ。[#地から1字上げ](明治三十四年一月「文芸倶楽部」)



底本:「日本現代文學全集 6 幸田露伴集」講談社
   1963(昭和38)年1月19日初版第1刷
   1980(昭和55)年5月26日増補改訂版第1刷
初出:「國會」
   1892(明治25)年5月
   「文藝倶樂部」
   1901(明治34)年1月
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記を新字、旧仮名にあらためました。
※「御陵《みさゝぎ》」と「御陵《みさゝき》」の混在は底本通りにしました。
入力:kompass
校正:門田裕志、小林繁雄
2008年3月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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